ボルゾイ大好き! ランディーが運んでくれたノスタルジア

ランディーと散歩するようになってから、幼い頃行った場所に再び足を運ぶようになりました。道すがら何気なく考え事をしていると、何かのはずみで過去の記憶が蘇ることがあります。
いくつかのコースをその日の気分で選択するのですが、そのひとつのコースの途中に不自然な場所があります。何が不自然かと言いますと、長く続くコンクリートの壁の一部分だけが古いレンガ造りになっているのです。
そう、半年以上も過ぎた頃でしょうか、ある日、その場所にさしかかろうとした時、一瞬、脳裏に映像が浮かんで消えました。そしてまた・・・、その細切れの映像はやがてひとつのムービーへとつながっていきました。
それは私が幼少の頃、5歳くらいの頃でしょうか、母に連れられて父の弁当を届けに行った記憶でした。
「会社」という子供が踏み込んではいけない場所。正門を通ると、そこは広い敷地でした。普段は外壁で覆われ、外からは決して見ることができない光景です。
いくつもの大きな建物が立ち並び、時折、働いている大人達が出入りしています。空き地には何やら工場の瓦礫らしきものがうず高く積まれています。構内の道路を進み、少し離れた場所に出ますと、それまでとは違う小さな建物がありました。それが父の職場でした。
中に入ると『グォーーー』と、ものすごい音と共に熱気が立ち込めています。大きな大きな釜、蒸気機関車の何倍もの大きな釜が轟音を上げていました。父は繊維会社のボイラー技士でした。
父の作業帽は汗で滲み、首には手拭いを掛けています。汗と油の匂いがしました。私を見つけると近づいて笑顔で何か言っています。しかし、うるさくて何も聞こえません。・・・記憶はそこまでです。

『ここは、父が勤めていた会社の跡地、このレンガはその名残りだ・・・』
ハッと、我に返った私は、やっと、過去と現在の符号が一致したような気持ちになりました。

その当時は高度成長期の末期とはいえ、まだ景気が良く繊維業もやっていけました。しかし、市場を取り巻く環境の変化から、やがて衰退の一途を辿っていったのでした。いくつかあった会社、工場は今、跡かたもありません。
時を経て、父の勤めていた会社の敷地も今は大学のグラウンドに変わっています。そのコンクリートの外壁に何故、一部分だけ当時のレンガが残されているのか?謎は深まるばかりですが、きっと何かの計らいではないかと想像しています。

私が父の働く姿を見たのはこれっきりですが、初めて「親父の背中」を感じた体験だったように思います。

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